0◆ No.31〜No.40




No.31  ツケ
No.32  電話ボックスの女
No.33  探し人
No.34  窓の外
No.35  端午の節句
No.36  死の予言


■■■No.21〜No.30

No.41〜No.50■■■

◆ No.31
◆ MDから…
私の通っていた大学では毎年自殺者が多く、ある年には四月から六月までのたった二ヶ月の間に5人もの自殺者がいました。
この話は、部活の先輩が体験したものを聞いたものです。

大学の宿舎の近くに、一つのトンネルがありました。
そこは日中でも薄暗く、ジメジメしていて、あまり人気のない場所です。
当然、カツ上げや、痴漢等も出やすいらしく、ほとんど人が通ることはありませんでした。
(そこで首つり自殺をした人がいるらしいという噂もあるのでなおさらです…)

…その日は、雨がひどく降っていて、雷もなっていました。
先輩は、バイトに行く途中でした。
うっかり遅刻しそうになっていた彼はかなり急いでいました。
「このままでは、バイトに遅れてしまう!」
彼はトンネルの前へとやってきました。
いろいろといわく付きのトンネルですが、かなりの近道だったので、彼は仕方なくそのトンネルを通り始めました。
しかし、女の悲鳴が聞こえるとか、足音が追っかけてくるとか、嫌な噂を聞いていた彼はMDウかけながら、ボリュームを大きくして、はや歩きでトンネルの中を歩き出しました。
…トンネルの半分あたりまできた頃、突然、MDの音に変調が現れました。
今まで何ともなかった音楽が、急に途切れ出したのです。
早歩きとはいえ、走っているわけではないので、急にMDの音がとぎれだすことはありません。
それは、音飛びというのではなく、ぶちぶちと切れる様な感じで、MDが次第に止ってゆく感じになったそうです。
彼は恐ろしくなったものの、この状態のMDですら停止させるのも怖く、そのままさらに歩調を早めました。
すると、不意に音が止まりました。
「………………」
再び音が流れ出すまでのほんの1、2秒の間でした。
何か嫌な音が、イヤホンの外側ではなく、内側から聞こえました。
恐怖に耐えられなくなった彼は、ついに出口へ向かって走りだしました。
そして、ようやく外に出られそうになった時、不意に後ろからTシャツの裾がをひっぱられました。
しかし、彼は後ろも振り替えらず、夢中でトンネルを走り抜けました。
ようやく、バイト先についた彼は、調子の悪くなったMDを頭から再生してみました。
しかし、トンネルを通っていたときのような異常は出て来ません。
そのうちトンネルを通っていたときに聞いていたときの曲がかかり始めました。
「!」
トンネルの中で聞いていたときの曲だけが、トンネルの中で聞いた時の様に、音がとぎれていました。
そして、途切れた音と音の間には、女の人の悲鳴のような声が入っていたそうです…
彼は、すぐそのMDの中身を消去、捨ててしまったそうです。

「以前、友達と肝試し気分で通ったきは、トンネルを抜けるまで、曲一曲ぶんもない位の時間しかかからなかったのに、あの日は早歩きだったにもかかわらず、たっぷり二曲は聞いたような気がする」と彼は私に言いました。

◆ No.32
◆ 電話ボックスの女
友達と遊んだ帰り道、時間は午前2時をまわり凍えるような寒い夜でした。
とっくに終電は無くなっていたので、友達の所に泊まる事にしました。

友達の家はマンションで、その前には大手デパートのビルがそびえ建っていました。
ビルの周りは、街路灯や電灯が何本もついていて夜でも凄く明るいほどでした。
そのビルの敷地の一角に、電話ボックスが2つ並んで設置してありました。
そのうちの1つは、国際電話をかけられるもので、繁華街にあることから毎晩のように近所に勤めている2〜3人の外国人女性が電話をかけにやってきていました。
遊んで帰ってきたその日も、遠くから手前側の電話ボックスの中に赤い服を着た女性がいるのが見えていました。
「?」
しかし、何かいつもと様子が違います。
それは、だんだん電話ボックスのそばに近づくにつれ、大きく感じてきました。
電話ボックスと、中の女性との構図がずれているような歪んでいるような変な感じでした。
「なんか変じゃない・・・?」

とお互いに顔を見合わせましたが、凍えるような寒い真夜中、そんなことを気にせず真っ直ぐ部屋へ帰ろうと、私達は、足早で電話ボックスの脇を通り過ぎようとしました。
「でも…」
一旦、心には決めたものの、やはり電話ボックスが気になります。
電話ボックスの真横を通り過ぎる時、私達は電話ボックスに視線を送りました。
2つ並んだ電話ボックスの中に誰もいませんでした…
「あぁ、もう帰ったんだな」
と思った瞬間、
「!」
2つ並んでいる電話ボックスの間、約15cmぐらいの隙間に物凄い形相で私達を睨み付ける女性が…私達は、マンションに飛び込むとエレベータが来るのも待ちきれず、一目散に階段を駆け登りました。
必死に登りながらも、いま自分の見た物が信じられませんでした。
部屋のある階まで階段を登った私達は、目の錯覚だと思いながら踊り場から身を乗り出して、もう一度電話ボックスを見ました。
「!!!」
しかし、そこにはまださっきの女が電話ボックスの隙間からこちらを睨んでいました…。

◆ No.33
◆ 探し人
小学校5年生のときの林間学校で、付き添いの先生が話してくれた怪談話です。

その夜、森の中を一組の男女が、走っていました。
二人は、事情があって駆け落ちの途中でした。
しかし運悪く、逃げる途中で双方の親に見つかってしまい、森の中を逃げ回っていました。
「あっ!!」
走り慣れない夜道を走っていたためか、彼女は道から足を滑らせ崖下にある川へと落ちてしまいました。
普段は水かさも低く流れも穏やかな為、なんということのない川でしたが、前日まで降り続いた大雨の為、川は増水し流れも激しいものになっていました。
「……!」
彼は、流されて行く女性の手を必死に掴みました。
しかし、増水した川の勢いは強く、必死に掴む彼女の手は今にも離れてしまいそうでした。
『お願い!離さないで!!』
頭から水を被りながらも泣きそうな顔で、彼女は彼に頼みました。
その時でした。
遠くに自分たちを追ってくる、追手の灯りが見えました。
「あっ!!」
追っ手に動転した彼は、うっかり彼女の手を離してしまったのです。
次の瞬間、大きなうねりが彼女を呑み込みました。
彼女の姿は川の中へと消え、再びその姿が現れることはありませんでした…。
恐ろしくなった彼は、慌ててその場から逃げ出しました。
どれくらい走ったのでしょうか…ひたすら暗い森を走り続けると突然ひらけた場所に出ました。
そこには一件の古びた旅館がありました。
恐怖と疲労困憊だった彼は旅館に飛び込みました。

部屋に通された彼は、彼女のことを思い出しました。
頭の中には、先ほどの彼女の流されて行く光景が浮かびました。
「で、でも、…あの時は仕方なかったんだ…」
彼は頭を抱えながら、何度も何度も、自分を納得させようとしていました…。
いつしか、走り続けた疲労が出たのか、彼は眠りについていました。
どのくらい眠っていたのでしょう…。
ペタ…、ペタ…、ペタ…、ペタ…
異様な音で、彼は目を覚ましました。
耳をすますと、誰かが廊下を歩いている足音でした。
静かに聞いていると、その足音は彼の部屋の近くで止まりました。
…ガラガラガラ…
その足音の主は、その部屋の扉を開け、静かな声でこう言いました。
『コ・コ・ジ・ャ・ナ・イ…』
…ピシャン!
と、扉の閉まる音がしました。そしてまた、
ペタ…、ペタ…、ペタ…、ペタ…
と、足音は彼の隣りの部屋の前で止まりました。
…ガラガラガラ…
扉の開く音がしました。
『コ・コ・デ・モ・ナ・イ…』
…ピシャン!
再び扉の閉まる音がしました…。
彼はその声に聞き覚えがありました。
その声は間違いなく、駆け落ち相手の彼女声でした。
「まさか!?彼女が生きているはずないじゃないか…」
彼は頭から布団を被るとガタガタと震えました。
ペタ…、ペタ…、ペタ…、ペタ…
足音は、彼の部屋へと近づいてきます。
……ペタ…。
足音は部屋の前で止まりました…。
彼は布団の中で息を殺し、じっとしていました。
ガラガラガラ…
扉が開く音がしました…………。
…………しかし、いつまで経っても何も起こりません…。
「………?」
不思議に思った彼は、恐る恐る被っていた布団をめくってみました。
「!!!」
彼の目の前には、頭から滴を垂らしながら、びっしょりと濡れたまま、
怨みの形相で、ジッと彼を見下ろしている彼女でした…。
『コ・コ・ダ・ァ……』
彼女の口元は、ニヤリと笑っていました……。
…次の日、旅館の人がその部屋を尋ねると、部屋にはびしょぬれの布団だけが残されていました。

◆ No.34
◆ 窓の外
時代はバンドブームの真っ只中、私もK君もギターに夢中だったころでした。
その日私は、幼馴染のYとで、K君の家で遊ぶことになりました。
K君の部屋には窓が3つあり、一つは道路側、もう一つは隣の家側、そしてもう一つは道路側と反対の川がある方にありました。
「ん?」
部屋に入ると何とも言えない、変な感覚を覚えました。
しかし、それ程気になることもなく、そのまま遊んでいると、ふと部屋の四方に貼ってあるお札が眼に入ってきました。
そしてよく見ると、部屋の四隅には盛塩が…。
「なんであるの?」私。
「かーちゃんが置いとっけってさ」K君。
「ふーん・・・・・」
私は、部屋の中のそれらを見まわしました。
「そっか!だから何か変だったのか…」
そう思いつつ、そのままそこで遊び続けていました。
黄昏時になりそろそろ電気を付けようかなと考えている時、私の視線は自然に隣家の側の窓へと吸い寄せられました。
「…あれ?」
窓の外に、髪の長い女が立って揺れていました…。
「隣の家の人かな?」
と思いましたが、隣の家も私の友人宅です。
「いや、あんな人、あの家にはいない…」
と思っているうちに、窓の外の女はいなくなっていました。
しかし、目の錯覚だと心に決めて遊ぼうと考えていると視線を感じるのです。
今度は、川側の窓に目をやると、やはり女が窓の外から、ジッとこちらを見ているのです。
「やばい!」
と思い、目線を外そうとしますが出来ません…。
「………」
そのうちに、女はスーッと消えていきました…。
時間にして10秒くらいだったと思います。
私が呆然と窓を見ている様子を見た2人が、
「何をしてるの?」
と訊いて来ました。
しかし、私は2人を怖がらせないように、ただ
「別に…。」
とだけ答えました。
幸い、2人には見えてなかった様子でした。
その時私は、K君のお母さんが、何故お札と盛塩をしていたか分かりました…。
あれは間違いなく霊です。
だってK君の部屋は、2階にあるのですから…。

◆ No.35
◆ 端午の節句
私の父親の本家では、毎年端午の節句には人形を飾っていた。
頑丈なガラスケースに入った、馬に乗った鎧武者の人形だった。
代々受け継がれているといい、相当古いモノだったらしい。
節句時には親戚一同が集まる習慣があり、私も両親に連れられて本家に行きました。
しかし私は、その人形がキライだったらしい。
赤ん坊の頃、何故かは分からないが、その人形の近くに行くと泣きわめいていたらしい。
私がその人形を最後に見たのは小学校5年の時だった。

そのガラスケースは古いためか至る所にキズがついていた。
しかし、ある一カ所、キズが密集している場所があり、しかもそのキズは内側からついていた。
その年も本家に泊まる事になったが、深夜、ガラスをひっかく音に目を覚ました。
その音は人形が飾ってある部屋からしていた。
襖をそっと少しだけ開け中を見ると、馬に乗った鎧武者が刀を抜いて、その刀でガラスケースを斬りつけていた。
私は恐くなり、襖を閉め、布団に潜った。
翌朝、人形を見ることなく本家を後にした。
それから十数年、祖父が他界した事を切っ掛けに建て直しする事になり、倉なども取り壊された。
しかしその時、あの人形は見あたらなかったそうだ。
ガラスケースが割れていて中に入っていた人形だけが無くなっていたそうだ。
結局人形は見つからなかった。
その話しを聞いた時、私はあの晩見た光景を思い出し、人形がガラスを斬り割り外へ出たのでは?と思った。


◆ No.36
◆ 死の予言
私が小学1年生から3年生まで連続3年続いた恐怖体験です。
それは、毎年5月3日に起こる雨の日の出来事でした。

私は家で兄弟、友達と遊んでいました。
その時は、テープレコーダーを使ってみんなで声を吹き込んでました。
初めは声を吹き込んでは聞いて…、と、ただそれを繰り返していましたが、いつしか、その吹き込む内容は、身内の名前を使った悪質なニュースを読み上げるものになっていました。
「本日未明、バラバラ殺人事件と思われる遺体が発見されました、被害者は田中浩二(兄の名前)さんで・・・・」
というように、その時一緒にいる人を、被害者に見立てた殺人事件のニュースでした。
しかしそれにも段々飽きてきて、最期は今まで吹き込んだものを聞いていました。
「……!!」
突然テープの声が途切れました。
ザーーーーーーッ
というような空テープを流している音が続いた後、スローにしたような男の声が何かをブツブツと呟いているのが聞こえてきました。
そのうち、その呟き声はどんどん大きくなっていきました。
そのうち、テープの声ががはっきりと聞き取れるようになって来ました。
「………………………」
「涼子の名前言ってる…」
友人が口を開きました。
「……タ・ナ・カ・リ・ョ・ウ・コ……タ・ナ・カ・リ・ョ・ウ・コ……」
恐ろしくも苦しそうな低い声が私にも聞こえました…。
声は私の名前を2回繰り返して呼びました、とその時
「…のニュースです……。」
唐突に男の声が消え、テープからは先ほどまで吹き込んでいた声が聞こえてきました。
私は何度も巻き戻して聞いては、ただ恐ろしさのあまり泣きじゃくっていました。
結局、声の最初の方は聞き取れませんでした。
その後テープを、父にも聞いてもらいましたが、父は引きつった顔をしながら
「テープが伸びて何かの声が、そう聞こえるだけだ!」
とテープ引っぱり出して捨ててしまったのです…。
その後私はテープから流れてくる声に恐怖心を持つようになり、音楽さえも聞けなくなってしまいました。

翌年の5月3日、その日も雨の降る日でした。
その日があまりにも去年と状況が似ていたため、私は去年も一緒にいた友人と外へ遊びに行きました。
さすがに怖くて、家にいることが出来なかったのです。
雨が降っていたので、私たちは家の近くの橋の下で遊んでいました。
橋のたもとで友人と座って話しをしていると、
「………」
どこからか2〜3人の男の子の話し声が聞こえてきました。
「なんだろう?」
周りには友達以外に誰もいません。
私が川の向こう岸を見ると、向こう岸に2〜3人の座っている影が見えました。
「なんだぁ、あの子達の声かー。」
私は安心して話し続けていました。
相変わらず男の子達の、話し声は続いています。
「…?…」
しなし、何かがおかしいのです。
その声が、耳元で話しているかのように聞こえるのです。
よく考えると、対岸までは100m以上離れていて、頭の上の橋には車が走っています。
その為、友達との話でさえ、車の音で聞き取れないことがあるのです…。
私と友達は、おかしいと感じ、直ぐに何も言わずその場を離れました。
その後は、2人で恐怖心に駆られながら家路へと急ぎました…。
あれはいったいなんだったのか今でも分かりません。
今思うと、あの時本当に向こう岸に人がいたのかどうかも…。

3年目の5月3日も同じく雨でした。
毎年この日には、おかしなことが続いていたので、私は朝から何も起こらないよう願っていました。
でも、私の願い空しく、それは起こってしまいました。
その後の私を苦しめる出来事が…。

その夜。
時間は既に19時になっていました。
幸いこの日は、何も起こらずにすんでいました。
「あぁ、今年は何も無いないんだなぁ…」
私は安心して、居間で宿題をしていました。
居間には父と母がいました。
母は私の横でラジオを聞きながら横になっていました。
そのうち父が部屋から出ていきました。
私がふと母を見ると、母はラジオをつけながら眠っていました。
その時、私はラジオの音に言いようのない恐怖を感じました。

ザーーーーーーーーーーーッ

あの2年前と同じように、突然音が途切れました。
「…なんかくる!…なんかくる!!…
私の中で何かを感じていました。
ザーと聞こえる音の中に女の声がしました。
ものすごく早口で、何かを繰り返してしゃべっています。
「あぁ〜っ、助けてっ!!」
恐怖の中、聞くまいと思いながらも、私の耳はその声を聞き取っていました…。

「…タナカリョウコサンハ …年…月12日スイ曜日 死ニマス……
 ……タナカリョウコサンハ …年…月12日スイ曜日 死ニマス……」

「……!……」

何年、何月は聞き取れませんでした…。
その日以来私は、12日の水曜日に家の外に出る事はありませんでした…。

あの日から15年が経ちました…。
今でも、12日の水曜日が来る日をカレンダーでチェックしています。
毎年、自分がどんな死に方をするのか考えては恐怖しています…。
事故なのか?殺されてしまうのか?自殺してしまうのか?
または、何かにあの世まで連れていかれてしまうのか?…と。

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